フィアット独自技術のデュアロジックに続き、新たにニューFIAT500の代名詞となったのが、2010年に発表された『ツインエア TwinAir』という2気筒エンジンです。
わずか875ccの小排気量をターボで補い、低燃費とパワーアップを両立したダウンサイジングを、まさかの2気筒で実現…! これはクルマ業界の想像の斜め上(笑)すぎて、驚きの話題で持ち切りでした。そして奇しくも。先代チンクエチェントと同じ2気筒エンジンという…♪
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■エコカー時代に適応した2気筒エンジンの性能/スペック
先代チンクエチェント、Nuova500(旧フィアット500)の50歳の誕生日に発表された新型フィアット500。そして、そのちょうど3年後のバースデー7月4日に、新たにモデルに加えられたのが『ツインエア TwinAir』という2気筒ターボエンジンを積んだモデルです。
ツインは「2気筒」を、エアは「マルチエア」を意味します。875ccの直列2気筒エンジンに、マルチエアテクノロジーと小径タービンのインタクーラーターボを組み合わし、85ps/5,500rpmの最高出力と、14.8kgm/1,900rpmの最大トルクを発揮します。
●マルチエアとは?●
アルファロメオMiToでも採用されている連続可変バルブタイミング&リフト機構。吸気側にカムを持たず、バルブを電子制御の油圧駆動としてることが特徴。従来のスロットルバルブに代わり吸気バルブが吸気量をコントロールするため、燃料消費量と排出ガスを大幅に低減し、ドライバーのアクセル操作に対するエンジンレスポンスも向上。
デビュー当時、旧チンクエチェントが空冷2気筒のパタパタエンジンだったことを知る、古くからの500ファンをノスタルジックな気持ちにさせたことは間違いなく、ある意味ではFIAT500のオマージュとしても完成されたと言えるでしょう。
しかし、現代の『ツインエア TwinAir』2気筒エンジンのアプローチとしては、排気量を小さくすることで燃費を向上し、過給器(ターボ)によりパフォーマンスを確保するダウンサイジングの考え方で、あくまで効率性を追求した結果によるもの。
ツインエアの開発は、フィアット パワートレイン テクノロジーズ社(FPT)のチーフエンジニア、ヴィットリオ・ドリア氏の主導で開発されました。同氏によると、開発当初の段階で排気量を1リットル以下に抑えることは決まっていましたが、2気筒にするか3気筒にするか、かなりの検討がなされたそうです。(実際に2気筒に踏み切るのは思い切りが必要だった模様)
エネルギー効率の観点から、エンジンは気筒あたりの排気量が大きいほど冷却損失が少なく有利。そしてサイズ自体も軽量コンパクトになることから、部品数も少なくできコスト削減、燃費向上にも寄与するため、フィアット500をはじめ現在のFIATの小型車ラインナップ(Aセグメント/Bセグメント)にマッチすると判断され採用に至りました。ただ、875ccの2気筒エンジンだけでは、1トン前後のボディを動かすにはさすがに不十分なので、インタークーラー付きターボで過給しています。
●500/500C 4気筒の1.2L/1.4Lとの比較表●
0.9L TwinAir | 1.2L 8V FIRE | 1.4L 16V FIRE | |
エンジン型式 | 直列2気筒 SOHC8Vターボ |
直列4気筒 SOHC8V |
直列4気筒 DOHC16V |
総排気量 | 875cc | 1242cc | 1368cc |
圧縮比 | 10.0:1 | 11.1:1 | 10.8:1 |
最高出力(PS/rpm) | 85/5500 | 69/5500 | 100/6000 |
最大トルク(kg-m/rpm) | 14.8/1900 | 10.4/3000 | 13.4/4250 |
最大速度(km/h) | 173 | 160 | 182 |
0-100km/h加速(秒) | 11.0 | 12.9 | 10.5 |
CO2排気量(g/km) | 92 | 119 | 149 |
10・15モード燃費(km/L) | 21.2 | 17.6 | 13.8 |
■鼓動?振動? 唯一無二の個性を持つ『パタパタチンク』
直列2気筒エンジンのツインエアは、2つのピストンが同時に上下する構造上、一般的な3~4気筒のエンジンに比べると振動が生じます。バランサーシャフトという部品で振動を抑える設計を施されているとはいえ、アイドリングからの低回転域ではそれなりに体感できるレベルなので、たとえば日本のメーカーならまず販売に踏み切らないだろうとよく言われます(笑)
個人的な好みで言えば、僕はツインエアの『エンジンらしさ』は大好きで、内燃機関の存在感がいいねぇ~!と褒めまくりなのですが、たしかにコレを世界の市場に出せてしまうのはフィアットならでは、イタリアならでは… だとは思いますけどね。サウンドも独特で、エンジン音だけで判別可能。
ただ、贔屓目なしに客観的に捉えても「不快」な類の「振動」ではなく、心地よい「鼓動」と言っていいと思います。分かりにくい例えだけど、昔の2サイクルエンジンのバイクみたいなんですよね。『バタバタバタバタ…』と一定のリズムでビートを刻むので、体感的にちょっと気持ちイイ♪
イグニッションキーをひねって『ボロロン…ボロロロロ…』とゆる~いアイドリングから、アクセルを踏み込み発進するとき、この1速の立ち上がり(低回転域)がもっとも「振動」と「音」が大きい。1000回転あたりではターボが効いてこないので、ほぼ素の状態の2気筒875ccのみの、非力なトルクで約1トンの車体を動かすからです。なので、遠慮がちな発進ではやや重く感じます。
そうですね、ツインエアは、回してナンボですね。積極的にアクセルを踏み込んで最大トルクを生む1900回転まで到達させ、早めにシフトアップし加速していくほど心地よく、振動も軽くなっていく特性があります。走り出してしまえばパワー不足は感じないでしょう。
ただ、高速道路で80~100km/hを維持して巡航する際は、ハンドルから伝わる微振動が少し気になるかな、と思います。僕は以前に1.4リッターの500(※現在はカタログ落ち)に乗っていたので比較してしまうのですが、高速巡航での安定感ではやはり力不足は否めません。(加速自体は速いです!4速に落としてフルに回せば、追い越しするのにも充分パワフルです)
■ツインエアの評価は? 故障やトラブルはある?
フィアット500のツインエアは、デビュー直後の2011年に「グリーンエンジン・オブ・ザ・イヤー」と「インターナショナルエンジン・オブ・ザ・イヤー」の2冠に輝いています。この年、トヨタ・プリウスのハイブリッドシステム(1.8リットル直4+モーター)を抑えての高評価を得ました。
ツインエアは、欧州複合モード燃費23km/リットル、CO2排出量95g/kmという高い環境性能から「ダウンサイジングに最も成功したエンジン」と評価されています。
可変吸気バルブタイミングMultiAir テクノロジーを導入、吸気効率・燃焼効率を追求しパフォーマンスとエコノミーを高次元でバランスさせた2気筒8バルブエンジン、63kW/5,500rpmの最高出力とリッター26km を上回る低燃費を実現。875ccの小排気量ながらインタークーラー付ターボを採用、145Nmの最大トルクを1,900rpmの低回転にて発揮、直列2気筒特有の振動もカウンターバランサーシャフトで抑え、幅広い回転域でストレスの無い加速とドライブフィールを提供します。前後長の短い2気筒エンジンを横置搭載し、1.2モデルと同等の最小回転半径4.7mを確保、コンパクトサイズのボディと相まってドライバーが意図する通りの取り回しが可能です。
引用:FCA(フィアット クライスラー オートモービルズ)
ツインエアのエンジン自体の故障や不具合というのは、ほとんど耳にすることはありませんが、やはり(というか…苦笑)フィアット500の不調で取り沙汰されるのは主にデュアロジックでしょうね。
ただ、上の記事でも触れましたが、デュアロジックは機構的な欠陥ではなく、メンテナンス指導とか将来的な交換の必要性(クラッチ板などと同様に消耗する部品)の説明に消極的なのが問題…
さてさて、話を戻しますが、
それこそ心臓部であるエンジンが故障する状況はよほどの事(そんなにヤワじゃない)ですが、2気筒エンジンであるツインエアの特性は把握しておいた方がいいと思います。先にデュアロジックはロボMTと言われるセミオートマチックで、ご存知の通りAT限定免許で乗れるオートマ車のくくりながら、マニュアル車みたいにエンストすることがあるようです。(そう頻繁にはないでしょうけど…)
2気筒エンジンって、そんなに力持ちじゃないので、最初は重いわけです。走り出してターボチャージャーが効いてこないと真のパワーが発揮されない。となると、何かのタイミングで最徐行とかしてる時に、それこそデュアロジックがオイル汚れやオイル漏れで不調気味(油圧が足りない等)だったりすると、安全のためにコンピュータがエンジン止めちゃう(エンスト)
要は、他の箇所のトラブルに影響されやすい。言い換えれば、これがゴリゴリにパワーのあるエンジンなら、多少周りが調子悪くても走れてしまうということ。まあ、小排気量のクルマ全般でしょうけどね、ツインエアの場合はデュアロジックとのミスマッチも否定はできないかも(^-^;
細かいコトをあげだすキリはないですが… 2気筒のツインエアはスパークプラグも2本なので、たとえば1本が消耗してダメになったら(笑)ので走れないでしょうし、スタート&ストップ(アイドリングストップ)の不具合がエンジン始動にエラー出しちゃったりと、まあ、いろいろ(苦笑)
でも、エンジン自体はすごくイイ子ですよ!
gigi