世界には数多の改造チンクエチェントが生息しています。
そもそも、かの「ABARTH アバルト」もFIAT車のチューニング屋・レース屋さんであり、当時のオリジナルのABARTH595および695はエッセエッセ(SS)キットも含めて、フィアット公認のNuova500カスタムカーでした。可愛らしい見た目で小粒なのにピリリと辛い痛快な疾走り… そんなサソリマークのクルマは昔も今もファンの支持は絶大ですし、車イジリの原点を思わせます。
↓旧チンクエチェント・ブログの方にもまとめました
あの小さなボディに独自のカスタムを施すアイディアと悦びは無限大!?
カリオストロの城で活躍したルパン三世のFIAT500さながら、本気でスーパーチャージャーみたいなブースト機構を積み込む(ハリボテやコスプレでなく!)猛者も世界にはいるらしいですし、情熱は果てしないですね。
フィアット500「マキナ」とは?
さて、ここ日本にも「チンクエチェント・マキナ」と呼ばれるフィアット500(旧チンクエチェント)の改造車両が存在します。新しい現代版の方ではなく、先述のルパンがカリオストロで乗ってた方のお馴染みのクラシック・チンクですね。
パっと見た目はあの可愛らしい丸いフォルムのオールドカー。でも中身は「スバル サンバー」という亜種(希少種)です。
エンジンを載せ換えた、いわゆるエンジン・スワップ車。
スバル・EN型エンジン
元々のオリジナルは、チンクエチェント博物館と大手カー用品店(ネットの情報によると兵庫のオートバックス?)の共同企画という形でわずかな台数だけ製造されたという話ですが、今では「マキナ」といえば旧フィアット500の改造車両・リフレッシュカー全般を指す通称となっているようですね。
イタリア語で「車」とか「機械(マシン/メカ)」を意味する言葉が「macchina マッキナ」なので、たぶんネーミングの由来はそれなのかなと。
こちらの写真は海外の車両ですが、パッと見は普通に旧チンクだけど中身のエンジンは積み替えられてます。
YouTubeなどに動画がアップされてたりしますが、電気自動車に改造してある個体もあったり。新型フィアット500もいよいよEVチンクチェントが登場しますが、半世紀以上も前のオールド・チンクがEV車になってるなんて面白いですよね!
どんな乗り心地か想像もつきませんが(笑)
チンクエチェント博物館さんの手掛けたEVコンバートの"500クラシケev"も販売が始まり、ヒストリックカーを未来に託してゆく取り組みも現実的なものになりつつあります。
人間おもしろいもので、最新型の次期フィアットEV車が取り沙汰されている昨今となると、むしょうに旧いクルマの話がしたくなるというもので…
たしかに、もう既に半世紀以上が経ちレトロカーというよりもクラシックカーの部類になってきた旧フィアット500こと『Nuova500 ヌオーバ・チンクエチェント』。
旧車ながら今なお現役車の多い人気車種だけれど骨董趣味に近くなっている面も当然あります。
それでも、やはりFIATをはじめイタリア車全般において今なおシンボリックかつアイコニックな存在。そこにある原点に、開発・販売するメーカー側も、購入するオーナーも思いを巡らせない筈はないわけで、回顧され再注目されるのは必然といえるでしょう。ヒストリックで偉大なクルマってそういうもの。
スバル・サンバー(SUBARU SAMBAR)は1961年から2012年まで、度重なるマイナーチェンジを経てSUBARUブランドで生産されたニッポンの長寿車種。リアエンド床下にエンジンを横置きしたリアエンジンを採用。初期型は、旧チンク(FIAT500)と同じく1960年代に活躍していました。なんでも「農道のポルシェ」と呼ばれていたとか(笑)
フィアット500の改造車なんて邪道!?
あまりポジティブには捉えない歴史考証派の方も、まあ、もちろんいらっしゃると思います(かくいう僕も、どちらかと言えばオリジナル方面に寄せたいヒトです)。まあ、でも、クルマをどうイジろうが結局オーナーの自由ですから♪ ちゃんと手続きして違法改造にならなければ全然イイと個人的には思います。
旧チンクで2ペダルのATオートマ仕様、さらにはエアコン・クーラー冷房キット付きなど、ちょっと元祖フィアット500じゃ考えられない装備も実現可能なのだとか。
そもそも先述のアバルト然り、知名度では少しマニアックかもしれませんが「Giannini ジャンニーニ」や「Moretti モレッティ」「Francis Lombardi フランシス・ロンバルティ」など、小規模な自動車工場でカスタムされた500の例はひじょうに多く、ビーチ仕様の「jolly ジョリー」をはじめオフロード車や農耕車などヘンテコ(失礼 笑)な親戚筋もあげたら枚挙にいとまがない。
ライセンス生産でも、アウトビアンキ仕様の「Bianchina ビアンキーナ」やオーストリア産「Steyr Puch 500 シュタイア・プフ」など、イタリア国内外に500の兄弟たちが存在します。後者はマキナさながら独自のエンジンを搭載してますね。
元々、チンクエチェント博物館さんが開発した動機としては、フィアット500を未来に向けて保存していく為のアプローチの一つだったそうです。たしかに、一台でも多くの車体を残せる可能性は広がるわけで方向性としてはアリだと思います。けっこう海外には改造車両のチンクエチェント多いみたいですし。
それに、昭和の世代ならまだしも、平成も終わり令和のこの時代、若い人の大多数はオートマ限定免許なわけで。旧チンクだってこの先、僕らみたいなオジサンやオジイサンだけが乗るでもないわけで、当然ながら人間の方も世代交代していく。たぶん古い内燃機関の自動車を修理できる人も、いずれ日本に数人とかになっちゃう。宮大工さんみたいに。
僕らがいなくなっても、フィアット500には後世まで可能な限り長生きして欲しいです。心から願います。
クラシックカーこと”クラシケ”を未来に遺すために
元祖の『フィアット500 マキナ』はサンバーエンジン仕様(軽トラ車両のスバル・サンバーEN07型?)だったそうですが、調べてみると色々な試みで製作されている独自の「マキナ」が見つかりますね。
僕は1965年製の旧チンクエチェントにも乗っていますが、当然ながら維持するためのメンテナンスとして対策部品に交換したりパーツ流用もするので、どこまでがオリジナルでどこからが改造なのかはそれぞれの尺度とは思います。まあ、機関部であるエンジンを社外品から移植している個体を、ここではざっくり「マキナ」と定義しておきましょうか。
生産されて50~60年をゆうに越えてる車体も多い2代目フィアット500ことヌオーバ・チンクエチェント。現代の交通環境で走行して流れに乗れるかと言えば、正直な所けっこうキビシイ。安全基準も当時並みですし。
「愛」と「気合い」(…あと財力)
さえあれば、恐れることはありませんが、旧車なのでそれなりにストイックな乗り物ではあります。
ルパンの車を愛してやまない方が、少しでも安心して乗れる車体を… ということで「マキナ」を求めるのも一つのアプローチとしてあるでしょう。ただ、中古車でこういったマキナ仕様のフィアット500が果てして見つかるのか…?
それこそチンクエチェント博物館が携わったオリジナルの「マキナ」なんて、個人的にどなたかオーナーさんから譲り受ける以外はほぼ不可能でしょう。中古車市場に出回ることは、ほぼ有り得ないと思われます。(そもそもチンクをはじめ旧車は人から人に譲り渡ることが多い)
それに、いかにリフレッシュカーとしてレストアされた車体でも、やはり改造車なりのリスクはあるはずです。身元というか、手掛けたショップなり整備士さんが分からないと故障や不具合に対処できません。そこはオリジナルでない分、トラブルシューティングは難しい。新たな主治医を見つけることが出来るかどうか…
となると、
ベース車両から新たな「マキナ」を製作してもらうのが解決策です。お名前は出しませんが、FIAT500改に注力してらっしゃるプロショップのチンク専門店さんもあります。当然、ものすごく手間と時間と経費がかかるシロモノなので、一概には言えませんが300~400万は余裕でイッてしまうようです。(ノーマルの旧チンクだって完璧にフルレストアすれば250万以上する車体が多いのでコレは当たり前でしょうけど)
…うーん。
やっぱり、決して「楽チンク」というわけにはいかないようですな。おあとがよろしいようで!
チンクエチェント博物館(公式HP)
愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14-10