現代版フィアット500(チンクエチェント)が、いよいよ最新鋭のEVモデルとなり2021年末には日本でも発売となる見込み。そのEVフィアット500の上陸を目前に、なんとクラシック・チンクが先にEV化しちゃったものだから面白い!
このゼロエミッションな旧車のプロディースは、日本の500のパイオニアであり金字塔のチンクエチェント博物館さんが、プロジェクトとして始動させた取り組み。先代FIAT500(Nuova500)のようなヒストリックカーのEVコンバート実践の先駆けであると同時に、かなり練られた実現性のあるビジネスモデルであり文化活動と言えるでしょう。
かつてのスワップ車とか改造車のようなニュアンスとはまたちょっと違っていて、環境問題をはじめ、自動車が直面してる様々な問題へのアプローチ手法として、回答の一つとして捉えたいですよね。
FIAT500evが示す旧車の未来の在り方
誰にも整備されず、走ることなく静かに時を刻み続けるだけだった旧チンクエチェントを見つけてレストアし、電気自動車としてEVコンバート。それが「FIAT 500ev」。
アイコニックな外観・フォルム、内装はクラシックカー”Classiche クラシケ"の趣を損なうことなく可能な限り遵守、新しい環境時代に適応するための進化は、これからの50年後100年後も元気に走れるチンクエチェントで在り続けるための道筋のひとつではないでしょうか。
博物館やガレージに飾られる遠い昔のヴィンテージ品としてではなく、いつまでも自動車として乗り継がれて欲しいというチンクエチェント博物館さんの想いと願いが込められているプロジェクトだと思います。
”クラシケ”とは、イタリア語で「クラシック」という意味
ラテン語系のイタリア語は、形容詞にも、女性形・男性形・単数・複数があります。なので「クラッシカ classica」「クラッシコ classico」というように女性形・男性形の2通りがあります。イタリアワイン好きの方なら、キャンティ・クラシコとかご存知ですよね(^-^)
これが複数形になると「クラッシケ classiche」「クラッシチ classici」とそれぞれ変化するのですが、FIAT500(La Cinquecento)も、車を意味する「マッキナ macchina」も女性名詞のため、総称として複数の「クラッシケ classiche」があてはまるわけです。(プチ・イタリア語講座でした笑)
過去にもあった『マキナ』というスワップ改造車
イタリア車好きの皆様なら周知の通り、チンクエチェント博物館さんは以前(といってもけっこう昔)にも『チンクエチェント・マキナ』と呼ばれるFIAT500を手掛けています。
スバルサンバーからのエンジンスワップで、ATオートマ化されたフィアット500の珍種ですが、希少種チンクとはいえ元気に走っている現存の車体も残っているようです。ボディ形状とデザインを残してエンジンを載せ換えているから、レプリカとはまた違うでしょうし、フィアット500専門店がフルレストアとして世に送り出している個体は現在もありますし、ぼくも新旧チンクがたくさん集まるようなミーティングやイベント等でお見かけする機会もしばしばありました。
フィアット500のエンジンスワップの前例はそれなりにあり、先述のスバルサンバーの他、ホンダエンジンを積んでたり、軽自動車登録になってたり、エアコンを装備してたり。海外の改造車も含めると多種多様で、中にはちょっとエスカレートし過ぎな個体もあったり(苦笑)
今では総称として、日本では『チンクエチェント・マキナ』と言われていますが、元々はチンクエチェント博物館さん企画で製作された車両がオリジナル。製造された台数はごく僅かとのこと。
もちろん賛否両論ありますし、見方によっては暴挙と捉える価値観の人もいるかもしれません。
法律に準拠しているのだから所有車をどう改造しようと個々の自由というのはそもそも論。それでも、フィアット500のように世界的に愛好家がものすごくたくさんいる歴史的な名車は、なんだかんだ論争が起きたりもするのも”ならでは”なのかも。
EVコンバートは選択肢のひとつ
これはEV化・EVコンバートでもきっと同じで、やはりオリジナルの旧車にこだわるマニアからすればドンデモないことのように感じるのかもしれない。正しい正しくないの問題ではなく、愛着があるからこそ!なのでしょうけどね。
たとえば、伝統芸能なら「スーパー歌舞伎」にアレルギー反応を示す古参の演者さんやファンが当然いらっしゃるのと同じことだと思います。後世に遺すためには変容を受け入れなければならない側面もあると同時に、本来の在り方を変質させてしまうくらいなら滅ぶべきだという考え方もある。栄枯盛衰。
まあ、個人的には、一人でも多くの人が、一つでも多くの方法でアプローチを試み続けてさえいれば、この楽しさは絶えることなく受け継がれていくように思います。実際、新しい手法に一辺倒になるわけでもなく、様々な切り口から旧来のオリジナルに興味・関心を抱く人たちの層を開拓もできるわけだし、草の根的な取り組みこそがまた文化活動。
それに、
みんなフィアット500が大好きなのだから、それぞれが等身大で愛でればいいのだ!
まとめた!笑(^_-)-☆
チンクエチェント クラシケとは
チンクエチェント博物館が保護・保存に力を入れる「NUOVA 500」は、 1957年〜1975年にわたって累計367万台が製造・販売されたイタリアの大衆車です。 発売以来イタリアで愛され続け、今では世界中に愛好家がいます。 日本では、アニメ「ルパン三世」、映画「グラン・ブルー(Le Grand Bleu)」に登場したことで、より広く知られるようになりました。 このチンクエチェント クラシケを電気自動車にコンバートしたのが、「FIAT 500ev」です。 チンクエチェント博物館HPより抜粋