FIAT車で『ムルティプラ Multipra』といえば、ヌォーヴァ500(フィアット・チンクエチェント)の誕生した1950年代、その同時期にイタリアの街中で活躍していた独創的なワゴンを思い浮かべます。
ムルティプラ(Multipla)とはイタリア語で「多様な」という意味。その名の通り”マルチ”な活躍で、かつてのイタリア社会に貢献したヒストリックカーです。
1955年に世に送り出されたフィアット600(セイチェント)。
その2年後にデビューするフィアット500(Nuova500)は名前もフォルムも似ているから姉妹車とも言われるけれど、自動車として本質的な意味でダイレクトに血の繋がりがあるのは1956年生まれの『600 Multipra ムルティプラ』の方です。
セイチェントのシャシーを流用して製作されたのがワンボックスカーのムルティプラ。
通称ムルちゃん(笑)
わずか2mほどのホイールベースで短めの車体なのに、前列シートをフロント車軸上まで前進させるという鬼才ダンテ・ジアコーザ(500も手掛けたFIATのレジェント)の革新的かつ斬新的すぎるアイデアで克服。最大3列のシートを配置できる車内空間を確保しました。
タクシーや運搬輸送車などの商用車としても活躍し、戦後イタリアの経済成長を支えた往年の名車。
【追記】2021/10/17
千原ジュニアさんがチンクエチェント博物館で購入したそうですよ♪
グレー&ホワイトの1965年式Multipraに一目惚れのご様子。「フィアット・ムルティプラ、ブスかわいいなぁ」とのこと(笑)なんと4台目の旧車所有だそうです。(うらやまし~!)
2代目ムルティプラは気持ち悪い?かわいい?
ニューチンクエチェントみたいに、現代版の新型ムルティプラもあって、1998年に先代と同じく『ムルティプラ Multipra』の名前で2代目モデルが世に送り出されています。エンジンがフロントなので旧車時代とは別人のようですが、やはりクセの強さは先代ゆずりと言うか、それ以上のものがあるかもしれません笑
辛辣なイギリスの評論家たちには『世界一醜い車』とすら言われたことのある2代目ムルティプラ。日本にも2003年から輸入されていたので、なかなかの希少種ながら現在もまだ日本にも生息しています。ヒットはしなかったけれど、2010年までの13年間生産販売されていました。
お顔もフォルムもユニークすぎる新型ムルティプラちゃんは、旧Multipraのコンセプトを受け継いだマルチ・パーパス・ビークル(MPV)です。しかし、そのスタイルは独特すぎて、実際のところ好き嫌いはハッキリ分かれる模様。その当時は、ブサイクとか醜いとか酷評もされたようですが、最近はそれなりに愛されキャラの癒やし系扱いされることも多い(気がするw)
奇抜なデザインで個性的どころかクセの強い見た目ながら、なぜかジワってくる訴求力… この現代版ムルティプラを担当したデザイナーは、実は、後の現代版フィアット500を手掛けることになるロベルト・ジョリート氏なのです!
トレピウーノ(Trepiuno) Roberto Giolito
カバ顔と言われますが、こうして見ると僕たちガンダム世代にはZガンダムの『ジ・オ(The O)』にも見えますね~♪
まあ、たまたま色が近いというのもありますが(笑)
3人掛けシートが2列で、先代600ムルティプラと同じく6人乗りです。
さらに!運転席以外のシートは全てそれぞれが独立しているので個々に折り畳むことが可能で、リアシートは取り外すことも出来ます。まさに至れり尽くせり♪
そして後部のラゲッジスペースも広く、6名乗車でも490L、リアシートを全部取り外してしまえば1900Lまで積載能力は拡大します。
ガラス面が広いためルーム内も明るくて、車内の居心地はとても良いらしい(残念ながら乗ったことはないのです…)
ヘッドライトは通常の位置にロービーム、フロントウインドウ下にハイビームを置かれています。ゆえに独特なフェイス。
しかし、2004年にマイナーチェンジされて個性的すぎるお顔は少しマイルドになりました。
マイナーチェンジで変わりすぎ!?後期型ムルティプラのお顔は…
いや、もう別のクルマですね(笑)
どうやら当時はめちゃくちゃ不評だったらしく、フェイス・デザインは大幅に変更されてしまったようです。
ある意味では、脱個性化のおかげで、まったく普通のクルマになってしまった後期型ムルティプラ。やはりセールスは伸び悩み、2010年に生産終了となりました。こちらは「ニュームルティプラ」と称されるそうですが、どちらかと言うとイベントやミーティングで見かけるのは前期型の方ですね。