2011年のツインエア(TwinAir)導入に入れ代わる形でカタログ落ちした初期型ニューチンクエチェントの1.4(1400cc ファイアエンジン)
現在では中古車市場でしか手に入らないレア・チンクですが、その実力はどんなものだったのか? 初代のマイ・チンクとして1.4に乗っていた経験を交えて、思い出と覚え書きとして書き残しておこうと思います。
■デュアロジックとの相性は?
デュアロジックに関しては、1.2の方が絶対的なパワーが少ない分、低速域での特有のクセが出にくい。
ストップ&ゴーの多い街乗りに向いてるのは、残念ながら圧倒的に1.2とツインエアの方が有利で、信号の多い都市部ならややストレスフルでもある1.4。ATモードでの変速ショックも大きくなりがちなので、常にMTモードで運転した方が走りやすいし楽しいですね!
ある程度長く巡行できる地方、高速道路やバイパスを多く利用する環境の人にこそオススメです。後述しますが、特に高速巡行での安定感は、フィアット500では1.2はもちろんTwinAirも及ばず100psの1.4が随一だと思います。
インパネ中央のスポーツスイッチを押すと、変速スピードが速くなり、エンジン制御のプログラムマップが切り替わり、電動パワーステアリングのアシスト量も減り重くなります。
特に街乗りでは、ノーマルモードとスポーツモードでは体感的にも明らかに、全く別物のクルマと言えるでしょう。スロットル開閉が速くなるのでひじょうにレスポンシブでパワフルに! 特に初動のモッサリ感、弱点である重めな動き出しがグイっと押し出されるような感覚で鋭くなります。
アクセルワークに慣れないと2速への変速ショックで少し「つんのめる」のですが、信号待ちの交差点で先頭にいる時などスタートダッシュをかましたい状況はSPORTスイッチに切り替えたりしてましたね。全体的に高回転の走行が増える分、燃費は悪くなりがちですが、運転の上手い人が慣れるとむしろパワーモードの方が好燃費を出しやすいのはツインエアと同様でしょう。(※ツインエアも、ECOモードにしてパワーを落とすより、運転でメリハリを効かせた方がむしろ燃費をセーブできる)
■弱点はモッサリ感、そして曲がれないこと
1.4の最大の弱点は、なんといっても小回りが効かないこと。
1.2もツインエアも車格(大きさ)は全く同じなのになぜ曲がれないのか?それは、エンジンが大きいからである。エンジンルームを占める割合が大きい分、フロントタイヤの切れ幅が小さい。車はハンドルを切ると前輪が左右に動き、その動く幅を切れ角と言いますが、切れ角が大きいほど小回りが効きやすくなります。
つまり、エンジンが大きい分、物理的にタイヤハウスのスペースを多く確保できないわけで、前輪の振り幅(舵角)が小さくなるということ。この点についてはアバルトも同様で、同じ車格なのにまったく曲がれず、初めて乗ると駐車場とか車庫入れでビックリする。(フィアット500の1.4とアバルトでは体感的にさほど変わらない)
最小回転半径は、1.2に比べると0.9mと1メートル近く大きくなるので、タイトな曲がり角だとクルマの大きさの割に少し膨らませないと曲がりにくい。路上での転回も、場合によっては膨らませるか切り返さないとやや苦しい。ツインエアに乗り換えた時は、一発で転回できることに感動してしまったほど。なので、自宅まわりが細い路地だったりする人なら、チョイスとしては少し考えたい所だと思う。この大きさの車で何でこんなに曲がれないんだ?と感じるレベルではある。(アバルトも同じ)
■高速巡航・高回転型のチンクエチェント
イタリア本国版の6速MTだったなら本当にベストなのだけど、高回転型の1.4の真価は高速道路でいかんなく発揮されたと言えます。これは、ツインエアに乗り換えてハッキリと実感しました。
ツインエアも85psで、チューニングかませば1.4に並ぶ100psも捻り出せるのだけど、それでも1.4と比較すると高回転域では軽い。そこは2気筒ターボと4気筒ファイアエンジンの特性の違いでもあるし、車重の差でもある。
ツインエアの加速感は前に引っ張られるような感じで、一方の1.4はドッシリ地に足が着いた足回りで後からグイっと押し出される感覚。当然、高速道路を長く運転するなら1.4の方が疲れないし乗り心地も快適です。ツインエアの方は、80~100キロでの巡行だと僅かな微振動はどうしても残り、ほんの少しハンドルを取られる面もあるので運転のブレに気を使う感覚が残念ながら免れないですね。
■山でも走れる1.4はワインディングが楽しい!
1.4は登りを苦にしないチンクでした。エンジンの回転数が6000rpmを超えても引っ張れるので、3速に上げても失速することなくホールドして踏みまくるとめちゃ楽しいです♪ もちろんMTモードの一度で! SPORTスイッチもONだ!
ABARTH(アバルト)系には及ばないまでもハイパワーを出力しての粘りは山道や峠といったワインディングで痛快なハンドリングを披露してくれるのでした。